或る阿呆のナマステ

それこそひそやかに

自分の誕生日忘れるくらいに少し猫背のままでいるだけ

ベンチに座ると隣の老人がぼやく
「腹減った。銭が無え。」
バスに乗ると前の老人がつぶやく
「最近の餓鬼どもはあれだな、ハンバーガーばっかり食ってるから脳みそもあんな感じなんだな。俺が親だったらぶん殴ってやる」
朝の満員電車に乗ると優先席で老人が女子高生に怒鳴る
「俺はペースメーカー入れてんだ。文字打つな殺すぞ」
それを聞いたサラリーマンが激昂する
「黙ってろくそじじい。なにもしらねえくせに」
サラリーマンは優先席に腰掛け、ノートパソコンを繰り始めた。女子高生は携帯の電源を切り、座席を立ちしきりに老人に謝っている。
携帯電話がペースメーカーに及ぼす影響など微々たる物と言うかほぼ皆無。誰が悪いのか分からなくなり、サラリーマンと老人の間、女子高生の元座席に腰掛ける。誰が悪いのか分からないので老人に意見を請うた。
「やっぱりね、隣で電気使われると不安なんだよね。…怒鳴ったのは悪かったね…今はね、ユビキタスの時代だからね、仕方ないけどね。高齢化も並行して進むからね、ややこしい時代だよね」
どうでもいいが老人の口から「ユビキタス」と言う単語を聞くと、外国人が「どうかご自愛ください」とでも言うような心地よい違和感を覚える。
隣のサラリーマンに意見を仰ぎたかったがウォークマンで逃げていたのでほっておいた。周りの人たちは一触即発の事態だと思ったらしく僕を見るために僕の後ろの窓枠を凝視している。



朝から酒など飲まなければよかった。
高齢化が進めば老人の分母が増えるということだ。分子も増える。
団塊の世代がこぞって年金生活を始めたとき日本は未曾有の変質者社会へのシフトチェンジを迎えるだろう。