或る阿呆のナマステ

それこそひそやかに

こんな気分も春一番に乗りますか

オオカミ少年は性転換してゲイバーのナンバーワンホステスになった。
彼は彼の村が4年前本当にオオカミの群れに村を襲われたその直後に、村を追われたのであった。
「お前が普段から嘘をついてなければ、みんなお前を信じたのに。全部お前のせいだ」
元少年であるナンバーワンは村を出てせいせいしていた。
どいつもこいつも被害者面しやがって。俺の吐いた嘘を依りしろにして団結して村を建て直しやがって。
被害者はいつだって正義だ。加害者はいつだって絶対的な悪なのだ。相対的な物なんて誰も欲しがらない。気まぐれなオオカミではなく気まぐれな俺の嘘をそれに見立てれば話は早い。
ナンバーワンのニューハーフは畢生加害者サイドに立って生きていくことをこの時に決めた。
ゲイバー仲間の不美人な同僚と二人で飲んだことがあった。
「ああ、あたしなんで竿も玉も取ったって言うのにこんなに不遇なんだろう。」
オオカミニューハーフはそれに答えて
「そもそもお前は何でニューハーフなんかになったんだ」
「だって男でも女でもなくなれば生きて行くのがすごい楽になるような気がしたから。なんか枠に嵌った性別それぞれの社会的責任みたいなものを両方放棄出来るような気がしたから」
「結局ニューハーフにはニューハーフの社会があるのに気づいただろう。そこでお前は被害者面をするのか。ニューハーフなんていう異端の集団の中にいて、正義を気取るつもりか。被害者はいつも自分が正しいみたいな顔をするな。だが本当に正しいのは確信犯だぞ。加害者だ」
「意味がわかんないんだけど」