或る阿呆のナマステ

それこそひそやかに

階段

昼に終わった学校帰り、家から最寄の駅に立ち、空を見上げて怪しい気配。
「こいつは一雨来そうだ」
適当にやり過ごすため、駅前に屋根付きの階段を見つけ、三段目に腰掛けてぼぉーっとしていると、おしゃれなチューリップ帽を被ってポカリスエットのペットボトルを持った4歳くらいの男の子がどこからかひょこひょこやってきて、俺と同じく三段目にこしかけた。しきりに俺の顔を見ている。いや、ずっとじっと見つめているぞ。雨はまだ降らない。おもむろに男の子が一言、
「さみしいの?」
こんなドラマのためにあつらえたような展開、言葉があるんですか。答えあぐねて後ろを見れば10メートル先に携帯片手にけっこうな声量で会話にいそしむ、この子の母親と思しき女性がいた。
「寂しいのは君のほうなんじゃないのか?」
「うん」
そのあとその子はポカリスエットを階段にビシャーとやって慌てふためいて母親の元に去っていきました。結局雨は降りませんで、いざ帰宅と腰上げ10分歩けば土砂降りでした。思いやりのない私に罰が当たったのかと思ったが国道の向こうを見れば可愛い女子高生も無慈悲に降られていて自意識過剰を痛感した。