或る阿呆のナマステ

それこそひそやかに

ここに告白します。

実は僕は父がイギリス人で母が日本人のハーフなんですが、ええ、名前も   「ジョージ・マッケンジー(城島健司)」といいます。日本名とカタカナを組み合わせるベタなネーミングではなく、どっちにもとれるようにと、メタなネーミングを施してくれました親が。
それでですね。
件の父がすし屋でいつも会計のために「おーい!おあいそ」と店の人を呼ぶたびに、周りのお客さんが笑うんです。もちろん自分もその都度、違和感から笑いが止まらないんです。ええ、物心ついたころから、未だにです。
父は自分がイギリス人だということを踏まえて会計のことをおあいそと言っているんだろうか。このことは父の国籍上でのアイデンティティ、自身に対する俯瞰の程度、そしてそこからくる父の尊厳沽券にかかわってくる問題なんです、ええ。ですから僕は未だにそこについては触れることができないんです。
もし父がなんの衒いもなく「おあいそ」と言っていたら。まあいいんですけどね。


気づいたんです。僕も「おあいそ」と言えば笑われるんです。父ほどの違和感はないにしろ、笑われるんです。ハーフですから。濃いんですよ顔が。マイケル富岡以上クリスペプラー未満です。前後入れ替えても差し障りありません。
笑われるんだ。
それでいいんだ。
未来自分が日本人の妻を迎える。子供を授かる。その子がまた成長し、恋をし愛にし、日本人の伴侶を迎え、子を授かる。それを繰り返し、いつか私の血を持つ子がすし屋などで「おあいそ」と言っても何の違和感も醸し得ない、そんな日が来るはずだ。
それを想像するだけで、十分じゃないか。






2029-11-30
息子のきよしが、ドイツ人の婚約者を家に連れてきた。

というのがこのつまらない話のオチ。